光学式モーションキャプチャ・フォースプレートを用いず、床反力・関節モーメント・関節角度の推定精度を実証——埼玉県立大学との共同研究

歩行解析システム「GaitForce」を開発するAcceleBody株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役:青木治雄[CTO]・中村綾太[CEO])は、埼玉県立大学との共同研究による論文が、査読付き国際学術誌『Gait & Posture』(Elsevier)に2026年7月10日、オンライン掲載されたことをお知らせします。本研究は、専用の光学式モーションキャプチャ※やフォースプレート(床反力計)※を用いず、1台のRGB-Dカメラ※と物理ベースの最適化※のみで、歩行時の三次元動作、関節角度、床反力、および下肢の関節モーメントを推定できることを検証したものです。これにより、これまで大掛かりな設備を要した歩行の力学解析を、より簡便な構成で行える可能性が客観的に示されました。

研究の背景

3次元動作および床反力、関節モーメントを数値化する「力学解析」は、研究領域では活用が進む一方、臨床の現場では動作や姿勢の評価が「目視」に頼らざるを得ないのが実情です。歩行時の三次元動作や床反力、関節モーメントを正確に計測するには、従来、光学式モーションキャプチャやフォースプレートといった大掛かりな計測環境と専門知識が必要とされ、導入コスト・設置スペース・計測の手間が普及の障壁となってきました。

こうした課題に対し、本研究では、これらの専用設備を用いずにカメラという簡便な構成で、妥当な精度が得られるかを検証しました。

研究の内容と成果

  • 手法: 1台のRGB-Dカメラで撮影した歩行の三次元動作を、AIによる推定ではなく力学モデルに基づく物理ベースの最適化で解析し、床反力・下肢関節モーメント・関節角度を推定。
  • 検証: 推定結果を、標準的な計測手法である光学式モーションキャプチャおよびフォースプレートによる計測値と比較。
  • 成果: これらの専用設備を用いずとも、関節角度・床反力・下肢関節モーメントを妥当な精度で推定できることを確認。(精度指標とその算出方法の詳細は、論文本文をご参照ください。)

補足:本論文は初期バージョンでの検証結果です。GaitForceは現在、当社が自社開発した新型カメラ「AB Cam」と解析ソフトウェアの刷新により、さらに高い精度でご提供しています(AB Camは既に提供を開始しています。詳細は当社ウェブサイトをご覧ください)。

技術紹介

比較機能

今後の展開と展望

関節にかかる負荷を「見える化」し、誰もが計測できるようにすることは、健康寿命の延伸を目指す当社の創業ビジョンの中核にあります。今回、その基盤技術の精度が査読付きの国際学術誌で裏付けられたことは、研究と臨床をつなぐ新しいインフラの実現に向けた重要な一歩です。

まずは、動作解析に取り組む研究者の皆さまはもちろん、臨床の現場で患者さんの動作や姿勢を「定量的に評価したい」と考えている理学療法士・医療従事者の皆さまにも、専用の設備を用いずに手軽にデータを取得できる機会を提供してまいります。研究と臨床の双方で計測の裾野が広がり、そこで得られた知見が現場に還元されていく—その循環を大きくしていくことが、健康寿命の延伸という長期的なビジョンにつながるものと考えています。

代表取締役CTO 青木治雄 コメント

私たちは『どこでも誰でも動作解析ができる世界』を目指してきました。 本論文で弊社技術の有効性を客観的に評価できたことは、その実現に向けた大きな前進です。 また、今回の研究で課題と改善方針も明確になりました。 独自開発したカメラ AB Cam の活用や、新アルゴリズムの開発によって、さらなる改善に努めてまいります。 研究にご尽力いただいた埼玉県立大学の先生方に、心より感謝申し上げます。

論文情報

  • 雑誌名: Gait & Posture(Elsevier)
  • 論文名: Force-Plate-Free Estimation of Ground Reaction Forces and Lower-Limb Joint Moments During Gait Using a Single - RGB-D Camera and Physics-Based Optimization
  • 著者: 久保田圭祐、青木治雄、中村綾太、鈴木陸、金村尚彦(論文記載の順)
  • 掲載日: 2026年7月10日(オンライン公開)
  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2026.110285

※期間限定の無料アクセスリンク(2026年9月6日まで、登録・費用不要): https://authors.elsevier.com/c/1nSUn3RoQ8uBmZ

用語解説

  • ※光学式モーションキャプチャ: 身体に貼付したマーカーを複数のカメラで追跡し、動きを高精度に三次元計測する装置。高精度で標準的な計測手法だが、専用の計測環境の確保が必要であり、計測準備や計測後の解析処理に時間と手間がかかる。
  • ※フォースプレート(床反力計): 地面から身体に加わる力(床反力)を計測する専用装置。大型で設置場所や費用の制約がある。
  • ※床反力・関節モーメント・関節角度: 床反力は足のかかる地面からの反発力、関節モーメントは関節を動かす際に生じる回転力(膝関節内反モーメント(KAM) は変形性膝関節症との関連が知られる代表的指標)。いずれも関節への負荷や動作を評価する基礎となる。
  • ※RGB-Dカメラ: カラー画像(RGB)に加え、対象までの距離(Depth)を計測できるカメラ。
  • ※物理ベースの最適化: 学習データに頼るAIではなく、物理モデル(運動方程式)と数理最適化理論に基づいて、観測された動きと整合する力を推定するアプローチ。多くのAIのようにブラックボックス化されておらず、計算過程や結果を解釈しやすいのが特徴。

会社概要

  • 名称: AcceleBody株式会社(アクセルボディ)
  • 所在地: 東京都豊島区千川1-25-18
  • 代表者: 代表取締役CTO 青木治雄、代表取締役CEO 中村綾太
  • 設立: 2023年12月
  • 事業内容: 歩行バイオメカニクス解析システム「GaitForce」の開発・提供
  • URL: https://www.accelebody.com/

「GaitForce」は、ロボット制御技術を応用した歩行バイオメカニクス解析システムです。自社開発のカメラ「AB Cam」1台・約1分の計測で、三次元動作、床反力、関節モーメント(KAMを含む)、関節角度といった指標を推定します。医薬品医療機器総合機構(PMDA)に一般医療機器 として届出済みです。